STORY

 

日常の中に自分とつながる静かな時間をもつことは、心に安定をもたらします。なぜなら人は自分と深く向き合う時間によって、気持ちや考えを自然と整理し、やがて満ち足りた気持ちをも引き起こすからです。

例えば仕事がうまくいかなくて不安でいっぱいになっているとき。女性であれば、ホルモンの影響でどうしてもイライラしてしまうときもあるでしょう。そんなときこそ内なる自分とつながる静かな時間をもつことで、自分の気持ちと今あるその問題との間に適切な距離ができ、客観的な視点が生じてくるはずです。すると心は自然と安定し、自ずと解決策が見えてくるのではないでしょうか。

私は以前、毎日朝から終電まで働かなければいけない企業に勤めていたことがありました。そこでは働いている人みんながオーバーワークでしたが、帰ると仕事がまわらないため誰も終電まで席を立とうとはしませんでした。当然私も終わらない仕事を前に帰ることなどできず、頭がぼーっとしながらも働き続けていました。今思うとその頃の私はただ仕事のためだけに生きていて、些細なことにイライラしたりいつも不安を抱えていて、心はまったく穏やかではありませんでした。まもなく働き過ぎが原因でホルモンバランスが乱れ始め、ついには仕事ができなくなるほどにまで体調を崩してしまったのです。

このことは自分を見つめ直す大きなきっかけとなりました。このような状況になってしまったことに戸惑いながらも、何のためにここまで働いていたのか、本当に求めていることは何なのか、どんなことをしたくないのかなど自分の本音を聞いてあげるようにしたのです。最初は自分の本音を聞くと言ってもどのように聞けばいいのかわからなかったのですが、掃除や裁縫などの手仕事、ウォーキングといった日常にある些細なことが、自分の内に意識を向ける手助けとなってくれました。
私がその時間の中で感じたことは、当初は自分が望む仕事に就けたことが嬉しくて、しっかりそこで結果を出したいという気持ちで頑張っていたものの、いつの間にか人の目を気にして周りに合わせ過ぎていたり、ちゃんとしなければいけない、どんなことがあっても途中で投げ出してはならないという過剰な責任感にすり替わっていたんだ、ということでした。
知らず知らずのうちに無理を重ねていた私は、非人間的な働き方や自分を大切にできていない日常になんとも言えない怒りや悲しみを溜め込んでいて、それが大きなストレスとなっていたのです。しかし自分の本当の気持ちを聞いてあげることを、毎日の忙しさのせいにして避けていたのは、他の誰でもない自分自身であったと気づきました。そしてそのことから、人もまるで植物のように環境からの影響を大きく受けるからこそ、自分で自分に望む環境を与えてあげることがいかに大切なことであるかを改めて痛感しました。

それからは自分とつながる時間をもつよう意識して過ごしていました。やがてそれが日常となっていた頃、いつものようにただぼーっとお香の煙を眺め、その動きの美しさに見惚れていたときにフッと、自分が本当に欲しいものは「気持ち」なのではないかと気づいたのです。モノや経験ももちろん欲しいけれどそれらは本質的には「欲しい気持ちになるためのツール」であり、その「欲しい気持ち」というものをさらに突き詰めると「満たされた気持ち」であるのではないか、と。
それはお寺や神社に行ったときや、音楽を聴いて心が洗われているとき、何かに集中しているときなんかに現れるあの感じ。気が高くなっているとでもいうのか、気が整っているという方が正確なのか。呼吸がいつもより近くに感じられ、頭がスッとクリアになり、凪のような穏やかさの心がすとんとある、そんな感覚。それは頭と心を自由にし、自分を好きだと感じられ、すべてが大丈夫だと思える、静かなる強さとも言うべき気持ちを湧き起こさせるものです。

 

 

静寂のひとときをもち、心を落ち着かせ、考えや感情を整理する時間を通り抜けていくと、やがて満ち足りた気持ちに辿り着く。このことに気づいた私は、ストレッチをすることも、お気に入りのカフェに行くことも、楽器を演奏することも、ただ深呼吸をすることも、全部その先にある気持ちを味わいたいからしているのだとはっきりと自覚して行うようになりました。
そのことは自分の考えや行動に一つの指標をもつこととなり、心身ともに良い影響を与えているように感じます。日常的に満ち足りた気持ちを感じられるようになった今では、適度に働き適度に遊ぶために新しい働き方を始めようと、一歩を踏み出すことができるようになりました。また、日々起こる様々な問題との向き合い方も、感情に振り回されることなく自分の中の軸を基に、冷静に対処できるようになっていると感じています。


きっと人は誰でも自分と上手くつながったとき、心に満ち足りた気持ちが広がるのだろうと思います。つまりは自分との時間をもてばその気持ちが手に入るのですから、欲しい気持ちを自分でつくれるということでもあり、そんな頼もしいことはないと思うのです。それは自分がちょっと強くなったような、自分に心強さを感じられるような、そんな変化を起こさせるはずです。

あなたも本当の自分に帰るゆたかな時間をもち、満たされた気持ちを味わう、そんなライフスタイルを始めてみませんか?